2008年 07月 11日
白山は、富士山・御嶽山と並んで日本三大霊山として有名であり、最高峰の御前峰(2702.2m)を中心として、近くの剣ヶ峰(2677m)と大汝峰(2684m)、そして少し離れた別山(2399m)などの周辺の峰々を含めての総称です。もちろん、日本百名山にも入っていますが、これまで登山する機会がありませんでした。今年は是非とも登ろうと年頭の登山計画に組み入れて、夏山シーズンの始まる直前に7月中旬に設定しました。 1泊しか日程が取れないので、最も白山の魅力(眺望&高山植物)を満喫するコースとして、初日は別当出合から出発し、砂防新道を登って室堂センターに宿泊、2日目は御前峰に登頂し、お池めぐりをして、室堂センターに戻り、エコーラインから南竜山荘に向かい、油阪から別山に向かい、下山は長いチブリ尾根を下って市ノ瀬ビジターセンターまで戻るという行程にしました。予定歩行時間は、初日4時間20分(標高差1200m)、2日目9時間30分(同1870m)です。 今回は気のあった山仲間3人と一緒に山旅です。午前6時に京都を出発し、京都東ICから名神、北陸道を経由し、福井北ICで下り、国道416号線を九頭竜川沿いに遡り、勝山で国道157号線を白峰に向けて走ります。ここまでは、5月に行った取立山と同じです。やがて県境トンネルである谷トンネルを越えると、やがて白峰村(現在は白山市白峰町)に至りました。ここからさらに手取川に沿って遡上し、白山温泉のある市ノ瀬ビジターセンターに到着しました。 登山口はまだ先の別当出合ですが、夏山シーズン中はマイカー規制があり、市ノ瀬の駐車場に車をとめてシャトルバスで別当出合まで行くことになります。今年は、7月18日からマイカー規制が始まるとのことでしたので、今日は車で別当出合まで入ることにしました。別当出合に到着したのが午前10時でしたが、まだ駐車スペースには余裕がありました。 天気は曇りで、今にも雨が落ちてきそうです。予報は、日本海を気圧の谷が通過している関係で不安定で、雷雨になるかも知れないとのことでした。晴れていたら眺望のより観光新道を登ることにしていましたが、雷に遭うと尾根では逃げ場がないので、今日は谷沿いの道である砂防新道を登ることにしました。身支度を整えて、何とか室堂まで雨がもってくれるように祈りながら、いざ出発です。 別当出合の駐車場から少し登ると、バスの発着する別当出合センター(標高1260m)がありました。ここには、休憩所やトイレなどがあります。実質的にはここが別当出合の登山口になっています。ここから観光新道と砂防新道とが分岐しています。左に登っていくと観光新道に入りますが、今日は右にある吊り橋を渡り、砂防新道に入ります。この別当出合吊橋は10月下旬から春の山開きまで通行できないとのことです。 吊り橋を渡ると、左手に砂防堰堤を見ながら、谷沿いに登っていきます。さすがに人気のコースであるだけに、登山道はしっかりと整備されています。大きくジグザグを切りながら登っていくと、早くもポツリポツリと落ちてきました。そうたくさんの量ではないので傘を差して登ることにしました。 登山道の周囲には、所々ブナの木があり、憂鬱な気分を和ませてくれます。やがて、小さな広場についたかと思うと、ここが中飯場(標高1520m)と呼ばれる最初の休憩所で、トイレと水場があります。 中飯場からは、さらにしっかりとして道を少しずつ登って行きます。別当出合から登ってきた砂防工事用車道を2回横切ります。右方向に不動滝を眺望しながら登っていきます。 次第にダケカンバの木が出てきたかと思うと、「別当覗」と書かれた標識(標高1750m)がありました。ここから別当谷の大崩と別当出合が眺望できるようですが、今日はガスのため見えません。 なおもしっかりとした登山道を進みます。ふと登山道の右脇を見ると、何やら大きな白い花が咲いていました。キヌガサソウ(衣笠草)です。以前猿倉から白馬鑓温泉に登る途中に見たことがありましたが、今回は5つ6つかたまって群生していて、とても華やかでした。今回の山旅では、これからたくさんのキヌガサソウに出逢うことになります。 出発して2時間あまりで甚之助避難小屋(甚之助ヒュッテと書いてある)に到着しました(標高1975m)。時刻は12時30分で、数グループの登山者が昼食を食べていましたので、私たちも昼食を摂ることにしました。 小屋前のベンチでラーメンを作って食べましたが、時折晴れ間が出てきたり、曇ったりして、はっきりしない天気が続いていました。小屋は古くて泊まるのには今ひとつという感じでしたが、トイレと水場がありました。ここから甚之助谷をはさんで、南方向に御舎利山、別山が見えていました。別山から右手に延びる尾根はチブリ尾根で、尾根の途中に避難小屋の赤い屋根が見えていました。 さて、昼食とコーヒータイムが終わり、出発です。別山の姿を振り返りながら、最初は緩い登りです。間もなく石段の急な坂になりますが、しっかりとしているので、案外簡単に登っていくことができます。登山道の脇にはコイワカガミがピンクの花を咲かせていました。低山に咲いているのはオオイワカガミで、高山に咲いているのはコイワカガミです。花の大きさはさほど変わりませんが、葉の大きさが違っています。 20分ほどで南竜山荘への分岐(南竜分岐)に着きますが、ここでは左にとって、室堂をめざします。しばらくは緩い道となり、雪渓の残っている別当谷の源流付近を横切ると、十二曲がりと呼ばれる急坂に入ってきます。登山道の両脇には、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、サンカヨウ、キバナノコマノツメなどのたくさんの高山植物が咲いていました。途中に水場があり、「延命水」と書かれていました。竹製の小さなコップがあったので、ちょろちょろと流れ出る清水を汲んで喉を潤しました。 やがて、大きなごつごつとした岩のあるところに着きました。「黒ボコ岩」と書かれていました(標高2320m)。安山岩の大きな塊の岩に登るも、ガスのため周囲の景色はありません。岩の周辺にはコケモモの小さな花が咲いていました。 ここで観光新道と合流し、弥陀ヶ原に入って行くことになります。晴れていれば、弥陀ヶ原の向こうに主峰の御前峰が初めて見えてくることになるのですが、今日はガスのため眺望がありません。木道が敷いてあるので、その上を軽快に歩くことができます。木道の脇には、ハクサンコザクラ、チングルマ、アオノツガザクラの花が可憐に咲いていました。 間もなく、右からエコーラインが合流してきました。ここから室堂センターまでの最後の坂である五葉坂に入ることになります。 ごろごろとした岩の間を頑張って登ると15分ほどで靄の中に室堂センターがうっすらと見えてきました。午後3時20分室堂センターに到着しました。宿泊の受付を済ませる前に、いきなり生ビール(800円)を飲んだことはいうまでもありません。 受付を済ませ、くろゆり荘の3号室に荷物を置いて、センターに近い室堂平の周辺を散策してみました。あたりはガスに覆われていて室堂平の景色こそ見えなかったものの、ここにはお目当てのミヤマクロユリの花がたくさん咲いていました。 クロユリといっても、実際の花は真っ黒ではなく、暗紫色あるいは濃茶色といった感じで、光線の具合で微妙に色が変わって見えます。20cmほどの草丈に花径3~4cmほどのやや大きめの鐘形型の花を1~3個輪生させ、花の内側には黄色い斑点が広がっています。お世辞にもきれいな花とは言えず、おまけに独特の悪臭があります。クロユリの受粉を手伝う主役はケブカクロバエと呼ばれるハエで、この悪臭がハエを呼び寄せるそうです。 クロユリにまつわる伝説があります。厳冬の立山・佐良峠越えをしたことで有名な戦国大名の佐々成政が愛した側室早百合がいわれのない姦通罪で成政に殺されましたが、そのとき早百合は「立山に黒百合咲かば、佐々の家は滅しよう」と言い残して死んでいったと言います。そして後年、早百合の呪いは実現して、佐々成政はお家断絶になってしまいます。以来クロユリは、人を不仲にして家を滅ぼす呪いの花とも言われています。 <コースタイム>080711曇り 1015別当出合 1105中飯場 1230甚之助避難小屋(昼食)発 1440黒ボコ岩 1520室堂センター
by kitayama-walk
| 2008-07-11 23:58
| 日本百名山
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