2007年 02月 24日
この時期、京都北山はまだ雪に覆われているところ、この冬は雪がない。雪がない北山の中でも、最も北山らしいと言われる魚谷山(いおだにやま)周辺を歩いてみた。二ノ瀬ユリ~貴船山(699.8メートル)~魚谷山(816.2メートル)のコースは、こよなく京都北山を愛した今西錦司、桑原武夫、西堀栄三郎など著名な登山家、探検家のホームグランドといわれ、日本初期の海外登山や探検の練習の場としてに大きな役割を果たしてきたところだといわれている。 正面左が魚谷山、その右の谷が細ヶ谷(芹生分岐から滝谷峠に向かう稜線から) 2月17日から京都バスの時刻表は全面的に改定されていた。岩屋橋行きバスは、北大路バス停8:23が8:43に変更になっていた。20分の時間があったのでMACでコーヒーを飲んで時間をつぶした。岩屋橋行きバスはマイクロバスであったが、5人くらいの乗客しかなく、登山客は私一人のようであった。バスは柊野を通過し、鴨川の源流である雲ヶ畑川を遡り、山幸橋-大岩-市ノ瀬-出合橋と進み、終点岩屋橋手前の白梅橋で降りた。 白梅橋バス停から少し戻ると、惣谷林道の入口がある。鉄製ゲートがあるが、これをすり抜けて林道を登って行く。惣谷は美しい北山杉に覆われた小さな谷である。最初がちょっと勾配があるが、やがて勾配も緩やかになり、舗装された林道をどんどんと進んでいく。左右に植林された杉林があり、これを切り出すための簡易ケーブルや小屋がいくつか設置されている。 単調なアスファルト舗装の林道を歩いていくと、小雪がちらついてきた。今日の天気予報は曇り後晴れということであったが、北山はちょっと違うようで、「北山時雨」ならず、「北山小雪」に見舞われた。40分ほど歩くと、2つ目のゲートがあり、林道が大きく左にカーブして、再び右にカーブするところに惣谷山への取り付きがあった。林道の左手に取り付きがあり、ここから西南方向に尾根が延びている。この尾根を下ると、微かな踏み跡があり、テープもつけられているので、小さな登りと下りの尾根伝いに行けば、10分ほどで惣谷山に至った。アカマツと雑木の林の中に三等三角点がひっそりと置かれていた。点名は「惣谷」、別名「キズラシ」で、明治36年6月19日埋標されたと記録されている。「惣谷山」「祖父谷山」というプレートが架けられていた。ここも灌木に覆われて展望がないところがいかにも北山らしいところである。 惣谷山から元の林道まで引き返し、再び林道歩きをすることになった。やがて林道が下りになり、どんどん下って行くので、あれと思いながらも進むと、途中で左から合流する林道に出合った。これはおそらく祖父谷から登ってくる林道であろう。合流した林道は再び登り始める。P711のピークを右に巻くように登って行く。やがて右側の展望が開けてくるところがあったが、今日は相変わらず小雪が舞っており、展望は望むべくもなかった。単調な林道の登りが続き、舞い散る小雪と相俟って、飽き飽きしてきた頃に、ようやく魚谷峠にたどり着いた。 魚谷峠は、昔から北山の峠らしい峠であると言われている。しかし、今は三方から林道が延びてきて、この峠で交差している。昔の魚谷峠のことを知っている人に言わせると、ここがあの魚谷峠かと思うほどの変わりようで、昔の北山らしい面影がなくなったと嘆かれる。惣谷林道からやってくると、右手からは松尾谷からの林道が上ってきており、左手には魚谷(医王谷)に下る林道がある。また、左手前の尾根には狼峠に向かう道がある。そして、突き当たりに魚谷山への取り付きがある。 魚谷峠への取り付きから少し登ると、かつてあったと思われる小屋跡があり、そこから右手が伐採された箇所があり、左に桟敷ヶ岳、右に雲取山が展望できるはずであるが、今日は小雪が舞っていたことから展望できなかった。仕方がないので、続く雑木林の中を登り、少し下り、さらに登ると魚谷山山頂に到達した。小さな広場になっているが、雑木に囲まれていて眺望は望めなかった。しかし、北山らしい雰囲気の漂うところであった。最近倒木があったようで、それをきれいに整備した跡が見られた。広場の真ん中に三等三角点があり、点名は「柳谷」、明治23年6月16日埋標されたとされている。山頂から東側に下ると、すぐに鞍部に出たが、ここが柳谷峠である。 柳谷峠は登山道が交差するところであり、左は医王沢に行く魚谷林道であり、右は細ヶ谷を下り、アズキ坂を経て、滝谷峠につながっていて、アズキ坂に至る途中に北山荘と今西錦司博士のレリーフがある。いつもは、細ヶ谷を下るのだが、今日は真っ直ぐ芹生尾根道を歩いて滝谷峠に向かうことにした。 この尾根道は、しっかりとしていてテープの目印が導いてくれる。ほどんどが雑木林の道であり、なかなか気持ちのよいところである。途中で急な坂があるが、尾根を外さないように行けば問題ない。やがて伐採されたところに出たかと思うと、芹生峠分岐に至った。この分岐を左に下ると芹生峠に行くが、右に真っ直ぐ進むと、右手側が開けてきた。前方の尾根道がしっかりと見える。左は植林帯であるが、右は遮るものがなく、見通しがきく。前方で尾根が右に曲がっているのが分かる。 ちょうど尾根道が右に曲がったところで、西方を見返すと、魚谷山の全景が浮かび上がってきた。その向こうに見えているのは、おそらく桟敷ヶ岳であろう。魚谷山から歩いてきた尾根が鳥瞰される。このときには、小雪はいつの間にか上がっており、遠望の景色もはっきりと見えるようになった。手前に1本だけ杉が伐採されずに残っているが、この辺りがP760である。 P760を過ぎると、再び登山道は雑木林の中に入り、尾根を南に下りながら、何回かアップダウンを繰り返した。途中で気持ちの鞍部に出たが、新緑の頃には素晴らしいところになっているであろう。やがて登山道は峠に出たが、ここが滝谷峠である。左に下ると奥貴船に至り、右に下ると、細ヶ谷から下った直谷に出る。今回は、貴船山をめざして真っ直ぐに行くことにした。 貴船山への道は、植林帯の中の道を行くことになるが、途中で左が開けている箇所がある。ここからは、手前に鞍馬尾根が見え、その向こうには焼杉山、翠黛山などが展望できた。 滝谷峠から南下する登山道から三角点のある貴船山への道が分かりにくい。途中で右手に尾根に登っていく分岐があり、ここを登っていくと、小さなピークに至った。ここにケルンがあり、貴船山のプレートがいくつか架かっているが、三角点がない。ここはニセピークであり、おそらく地形図のP722ではないかと思われる。 このピークから下っていく道があるので、これをそのまま下っていくと、二ノ瀬への谷道と尾根道との分岐に出るが、谷道を少し下っていくと、右手に小さな谷があり、ここに進んでいく。よく見るとテープがあり、これを確認しながら、鞍部から少し登っていくと、小さな広場に出て、その真ん中に三角点があった。 この貴船山の三角点は二等三角点であった。点名は「二ノ瀬」で、埋標こそ明治34年11月25日となっているが、最近新しいもの(右書き)に取り替えられたようである。山頂からの展望はないが、それでも北山の静かな雰囲気を味わうことのできる場所である。山頂からは南へ下る道があり、ここを下って5分ほど行くと、峠に出たが、ここが樋ノ水峠である。ここから右に樋ノ水谷を下ると直谷へ下りるが、左にとり、植林帯の中を下って行くと、やがては雑木林に変わり、滝谷峠から二ノ瀬へ向かう登山道(二ノ瀬ユリ)と合流した。 ここからは、いわゆる二ノ瀬ユリと呼ばれる道を下っていくことになる。途中で左手(東側)の展望が開けている箇所があり、比叡山系が一望できる。ユリ道は整備されていて、歩きやすい道である。滝谷峠を起点として、100mごとに番号を付されたポイントの杭が打たれていて、ハイキングの途中で事故のあったときに、携帯で消防署にその番号を連絡すれば救助されることなるのであろう。 やがて大岩分岐に着いた。右手に下っていくと、大岩に下ることになり、ここから尾根に上がっていくと、夜泣峠に至ることになる。 今日は、ユリ道をどんどん下っていく。途中で貴船口分岐と書かれた道標があった。予定では二ノ瀬まで下るつもりであったが、この分岐を下ってみることにした。少し急な下りであったが、10分ほどで叡山電車の貴船口駅に着いた。 <コースタイム> 920白梅橋バス停 1000惣谷山分岐 1010▲惣谷山 1025惣谷山分岐 1105魚谷峠 1125▲魚谷山(昼食)1210発 1215柳谷峠 1255芹生峠分岐 1300P760 1320滝谷峠 1415▲貴船山 1425樋ノ水峠 1445大岩分岐 1500貴船口分岐 1510貴船口駅
by kitayama-walk
| 2007-02-24 23:40
| 京都北山
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