2013年 07月 10日
【日 付】 2013年7月10日(水) 【天 候】 晴れ 【山 域】 奥秩父(甲斐) 【メンバー】kitayama-walk(単独行) 【コース】 上日川峠-福ちゃん荘-大菩薩峠-妙見ノ頭-雷岩-▲大菩薩嶺(2057m)-丸川峠-丸川峠分岐-大菩薩峠登山口(裂石)-大菩薩の湯 奥秩父の百名山は、これまで雲取山、両神山、瑞牆山、金峰山と登ってきたが、あと残るは甲武信ヶ岳と大菩薩嶺の2つだ。このうち大菩薩嶺は、首都圏からの日帰り登山のできる山として、山梨県内では三ツ峠山(二百名山)と人気を二分している。大菩薩と聞いて思い浮かべるのは、中里介山の長編小説「大菩薩峠」である。私自身、この小説を読んだことはないが、日本一の長編小説で、しかも未完で終わっていると聞いていたことから、興味関心があった。この山について調べてみると、標高2000mの稜線にあり、とくに大菩薩峠から大菩薩嶺と続く草尾根からは、富士山と南アルプスの山々の展望を眺めらながら歩けるということであった。ならば、天気のよい快晴の日に歩いてみたいと思っていたが、今回は早い梅雨明けのおかげで実現した山行であった。 「大菩薩峠が大勢の人に親しまれるようになったのは、その名前の文学的魅力だけではない。初心者によってまことに恰好な山だからである。東京から日帰りができるし、いろいろ変化のある安全なコースが開かれているし、展望はすばらしく雄大だし、それに二千メートルの高さの空気を吸うことができる。峠から大菩薩岳(嶺)にかけて甲州側は広々とした明るいカヤトで、そこに寝ころんで、富士や南アルプスを眺めているのは、全くいい気持ちである。」(深田久弥「日本百名山」より) 今回のルートは、ロッジ長兵衛のある上日川峠をスタート地点とし、福ちゃん荘を経由して大菩薩峠に至り、眺望のよい稜線を辿って大菩薩嶺に登り、その後丸川峠を経て裂石の登山口に下るという周回コースを選択した。裂石の大菩薩登山口から林道歩きで上日川峠に至ることができるが、これには2時間近くかかるので、上日川峠に直接行く方法を探したところ、甲斐大和駅からバスが出ている。土日祝は1日5便、平日は3便だが、一番早いのが8:10ということで甲斐大和駅には30分ほど早く着いた。しかし、人が全くいない。おかしいなと思いながら、バスの時刻表を見ると、何と平日は毎日運行しているのではなく、GW、お盆や秋の繁忙期だけだった。そして、バス運行している栄和交通の案内を見ると、上日川峠までのタクシー料金が約6500円と書かれていた。平日便の時刻が大きく書いてあって、運行日が小さく書いてある。これでは毎日運行していると勘違いしても不思議ではない。そういう登山者を見越してタクシーの営業をしているのではないかと疑りたくもなる。しかし、どうしようもないのでタクシーを呼ぶことにした。ところが、タクシーを待っている間に、私と同じような勘違いをした登山者が3人(50代男性単独者と20代カップル)やってきた。これはちょうどいい。4人で割り勘にすると1600円ほどになる。助かった。タクシーの運転手によると、最近は土日のバスは満員になり、座れなかった登山者は1時間ほどの蛇行する道中でかなり参ってしまうとのこと。タクシーだと30分あまりで上日川峠に到着した(8:55)。 上日川峠には、ロッジ長兵衛という山小屋があり、ここから福ちゃん荘に車道が続いているが、これにほぼ並行して山道がある。笹を切り拓いた登山道であり、しっかりとしている。ミズナラ、ブナ、ダケカンバなどの樹木が林を形成していて、その中を歩くのは気持ちがよい。今日は天気もよく、朝から晴れ渡っているのでハイ・テンションになる。15分ほどで福ちゃん荘に着いた。ここで大菩薩嶺直下にある雷岩に直登する唐松尾根への道と分岐して、大菩薩峠への道を進む。すぐに富士見山荘があったが、その名前のとおり、ここからは富士山の姿を見ることができる。さらに進むと勝縁荘に着いた。ここまでは車の通行できる林道歩きであったが、この先は登山道になっている。樹林の中を歩いていくが、しっかりとした登山道で、かつ明るい。あっという間に介山荘の建っている大菩薩峠に到着した(9:45)。ご存知のとおり、介山荘は作家・中里介山に因んでつけられたものである。今日は平日の朝ということもあってか、人はほとんどいない。 大菩薩峠には、「大菩薩峠」と書かれた大きな標識、首のない地蔵、その向こうに大菩薩嶺に続く稜線と、写真でよく見る光景が広がっていた。ここで写真撮影のため一息入れて小休止することにした。今日は快晴の天気で空が青い。峠から少し上がると、上日川ダム(大菩薩湖)の向こうに裾野を広げた富士山の姿がくっきりと見える。さらに南アルプスの山々が並んでいる。聖岳、赤石岳、荒川岳、塩見岳、農鳥岳、間ノ岳、北岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、鋸岳のラインアップは壮観である。まさにやってきてよかったと思う瞬間でもある。ここから雷岩までが眺望のきく稜線ということなので、じっくりと時間をかけて歩くことにした。少し登ると、中里介山の文学記念碑があった。これは五輪塔で、その碑面には、「名作発想の地 中里介山作 大菩薩峠記念碑」とあり、台石には「上求菩薩下化衆生」と、昭和29年10月23日建立と記されていた。文学記念碑の隣には「祝三界万霊塔建立碑」があった。この三界とは、生まれ、また死んで往来する世界であり、欲界・色界・無色界の三つの世界のことだそうで、万霊とはありとあらゆる精霊のことで、鳥や獣までを含む全ての精霊を合祀し供養するありがたい塔だそうです。 文学記念碑を過ぎ、稜線を登っていくと、次第に富士山の景色も大きく見えるようになった。前方に岩稜があり、これを登ったところが親不知ノ頭と呼ばれる展望地になっていた。ここでも暫し写真撮影だ。ここを越えると少し下りとなり、鞍部には避難小屋があり、その周囲には石積みがいくつかある。ここが賽の河原と呼ばれるところで、奥多摩(武州)と甲州を結んだ、かつての大菩薩峠である。前方に小ピークが見えるが、これが妙見ノ頭である。登山道は妙見ノ頭の左を巻くように走っている。時間的には余裕があるので、笹をかき分けて妙見ノ頭に立ち寄ってみることにした。ピークには「妙見大菩薩」の石柱があり、富士山の眺望がきく。さらに気持ちのよい登山道を登っていくと、岩稜があり、標高2000mの標柱が立っていた。どうやらここが神部岩らしい。ここを通過すると、雷岩に到着した(10:40)。この後は樹林帯の中に入り眺望がなくなってしまうので、少し早いが雷岩でランチタイムにすることにした。 雷岩で1時間あまりのランチタイムを楽しんだ後、大菩薩嶺山頂に向かうことにした。わずか5分ほどで山頂に到達した。樹林帯の中に小さな広場があり、その中央に三角点と大菩薩嶺の標柱が立っていたが、残念ながら眺望は全くなかった。眺望がないので、記念撮影だけして、そのまま丸川峠に向かうことにした。山頂からは最初北に向かって下っていくが、やがて左手に回り込み、山腹をトラバースするように進み、コメツガなどの針葉樹林帯の中を歩くことになる。眺望こそないが、静かな雰囲気がなかなかいい。コメツガが少なくなってくると、ブナやダケカンバが見られるようになり、最後は見晴らしのよい斜面を下ると、1時間ほどの歩きで丸川峠にやってきた。この峠には丸川荘がぽつんと建っていて、やけに明るい雰囲気のところである。ここで小休止していると、青空に入道雲がモクモクとわき上がってきた。一雨来るかも知れない。先を急ぐことにした。丸川峠からは、尾根の下りとなるが、これが結構な急坂になっている。明瞭な尾根の下りであり、登山道もはっきりしているので迷うようなことはない。どんどんと下っていくと、右に瀬音が聞こえてきて、尾根から下りることになる。そこには林道がやってきており、これを進むと、丸川峠分岐の駐車場に出てきた。ここからは舗装道路を歩いて、途中雲峰寺を見送ると、裂石の大菩薩峠登山口バス停に到着した(14:00)。バス停から10分ほど歩くと大菩薩の湯に着いた。ここで汗を流した後、バスで塩山駅まで戻った。 <コースタイム> 8:55上日川峠-9:10福ちゃん荘-9:45大菩薩峠-10:20賽の河原-10:25妙見ノ頭-10:40雷岩(昼食)11:50-11:55▲大菩薩嶺(2057m)-12:50丸川峠-13:50丸川峠分岐-14:00大菩薩峠登山口(裂石)-14:10大菩薩の湯
by kitayama-walk
| 2013-07-10 23:59
| 日本百名山
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