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山好き的日々@京都北山

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2012年 04月 15日

笈ヶ岳-登山道がない残雪期に登る秘境の峰(2日目)

【日 付】 2012年4月15日(日)
【天 候】 快晴
【山 域】 両白山地
【メンバー】 N野、A房、T野、kitayama-walk

【コース】 幕営地(冬瓜平手前)-冬瓜山-シリタカ山-P1640-岩底谷の頭-小笈-笈ヶ岳-小笈-P1640-冬瓜平-幕営地-P1418-P1312-P1271-山毛欅尾山-カンタの山-貯水池-中宮発電所-一里野温泉スキー場

 夜中にトイレに起きたときには空には満天の星。今日はきっと快晴になると期待が膨らみます。気温がぐっと下がったものの、テントの中でシュラフに入っていると寒さも何ということはありません。シュラフを持ってこずシュラフカバーだけで寝たN野氏は寒くて30分毎に目が覚めたとか。雪山にシュラフ持ってこないとはちょっと無謀じゃあーりませんか。

 3:30ちょうどに起床。外はまだ暗い。朝食は再びきのこ汁ですが、最後はごはんを投入して雑炊です。私は、いつものことながら、朝食はあまり食べることができません。これが後でシャリバテになって、しんどい思いをすることになります。ゆっくりと朝食を摂り、身支度を整えて、5:00ちょうどに出発です。笈ヶ岳への往復はザックには必要なものだけ詰めて登ります。

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 シリタカ山付近から笈ヶ岳を望む



 まずは冬瓜山(三等:点名冬瓜:標高1627.9m)に登っていきます。早朝で冷え込んでいるので最初からアイゼンを装着して歩くと、雪面に爪が食い込んで軽快に登っていくことができます。すぐに右手に白山の高峰群が白い雪をかぶって姿を現します。そして、遠くから太陽の光を浴びて、白い山が輝いてきます。神々しい白山の姿を目の前にすることができて感動します。

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 冬瓜平手前に張った6人用テント
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 日の出前に冬瓜山の稜線に向かいます
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 やがて東の空が明るくなり日の出を迎えます
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 朝日を浴びて輝く白山-いつも見る白山と違いますね
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 冬瓜山をめざし稜線を登っていきます

 どんどん登っていくと、雪のついていない急登の斜面にやってきました。冬瓜山直下の急登としてネットで紹介されている箇所です。ここにはロープが設置してありますが、木の根や枝をつかんで強引によじり登っていきます。ここはさほど難なく通過することができました。次にやってきたのは冬瓜山手前にあるナイフリッジです。ここもネットで写真が紹介されていますが、今日の光景はそれとは違っていました。左右が切れ落ちている岩尾根の上に雪がてんこ盛りになっていて、本当に馬の背のようになっています。この背から滑落したらお陀仏なので正直ビビりました。足が竦みました。二本足で歩くことができず、馬の背に跨がるように四つん這いになって、アイゼンで一足一足雪面に蹴り込み、ピッケルを深く突き刺しながら、ようやく通過することができます。距離にすると20mほどの短いものですが、本当に怖かったです。

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 稜線も怪しい箇所がいくつもあります
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 ロープの設置してある急登の場所
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 恐怖のナイフリッジ-三角木馬の背のようです
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 ナイフリッジも平気で歩いてしまうT野氏-ホント怖くないんでしょうか!

 ナイフリッジを越えると、冬瓜山の山頂に着いて一安心です。前方には、笈ヶ岳と大笠山が並んで大きく聳え立っています。ピラミダルな笈ヶ岳とどっしりとした大笠山は対照的です。ここからは一旦下りとなり、鞍部から再び登り返しとなります。比較的緩やかな登りになっていますが、右側に大きな雪庇になっているところがあるので踏み抜かないように注意を要します。次第に高みに上がっていくと、シリタカ山(1699m)の頂上に着きました。ここは笈ヶ岳と大笠山の展望台になっており、また振り返ると白山も雄姿を見せており、その間には籾糠山、猿ヶ馬場山、三方岩岳、野谷荘司山、妙法山、三方崩山、奥三方岳、間名古の頭などの加越山地の山々がぐるりと丸見えになっています(すごい!)。

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 前方に笈ヶ岳(右)と大笠山(左)が見えています
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 正面に笈ヶ岳を見ながら一旦下ります
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 鞍部に下りながら、冬瓜山を振り返っています
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 鞍部から登り返すと、冬瓜山の山容がわかってきます
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 振り返ると、白山高峰群がきれいです
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 白山高峰群のズームアップです
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 シリタカ山から笈ヶ岳に向かいます
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 シリタカ山からのパノラマ展望

 シリタカ山からは、笈ヶ岳に向かう稜線を見渡すことができますが、まだ結構距離があります。しかも、一旦下ってからの県境稜線への登り返しが待っていますので、まだまだ頑張らないといけません。まずはP1640までゆっくりと下り、そこから鞍部に急降下していきます。先行するトレースがなく、ツボ足で膝下くらいの沈み込みなので、まだ快適に歩くことができます。鞍部からは、右に雪庇が出ているので注意しながら登っていきますが、県境稜線の手前で少し左に巻くようにして稜線上の岩底(かまそこ)谷の頭に出てきます。県境稜線上は幅広になっていますが、最初は岐阜県寄りに雪庇に注意しながら小笈を向かって登っていきます。白い雪に覆われた小笈が青い空をバックにきれいです。小笈を越えてもう一度小さく下り、緩やかに登り返すと、ようやく笈ヶ岳の山頂に到着しました(8:25)。幕営地を出発してから約3時間半かかりましたが、バージンスノーの雪面にトレースを残しながら、ガシガシと歩みを刻んでいくことはひとつの快感です。今日は昨日と打って変わって、快晴の下、冷え込んで雪面が適度に固まっていて、しかもトレースのないバージンスノー、眺望も抜群でいうことはありません。こんなコンディションの下で秘境の峰・笈ヶ岳に登山することができ、山の神様に感謝です。

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 シリタカ山から笈ヶ岳を望む
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 シリタカ山からは一旦鞍部に下り、県境稜線に登り返します
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 P1640付近から県境稜線の岩底谷の頭を望んでいます
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 県境稜線の直下-このあたりが苦しいところです
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 振り返ると、シリタカ山と左には白山高峰群が見えます
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 左手を見ると、小笈に向かって先行する3人の姿が見えます
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 県境稜線に出ると、しんどさもなくなり、向かうは小笈です
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 青い空と白い稜線の境界線
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 小笈が近くなってきました
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 小笈の山頂に来ると、笈ヶ岳が目の前に見えます
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 振り返ると、冬瓜山、シリタカ山、岩底谷の頭と歩いてきた稜線が確認でき、その向こうには白山高峰群が見えています
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 小笈から鞍部に下り、笈ヶ岳への最後の登りになります
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 笈ヶ岳山頂に立ちました

 笈ヶ岳の山頂付近だけは雪が少なくヤブが出ていましたが、山頂には平成10年地元の山岳会が設置した木製の標柱と小さな石柱がありました。三角点は雪の下に埋まっていたと思いますが、もう少し探せば掘り出せたかも知れません。それから小さな祠があり、中に地蔵が祀られていました。深田久弥の前述書には「明治38年(1905年)の夏、参謀本部陸地測量部員が、土地の人7人を山案内として連れ、三角点を設けるため笈岳に登った・すると前人未踏と思われていたその頂上に、経筒2個、和鏡、太刀、黄金仏、木仏、やじり、法螺貝などを発見した。」と紹介されています。木村大作監督の映画「剱岳点の記」で有名になった明治の測量官柴崎芳太郎も陸軍参謀本部陸地測量部に属しており、明治40年(1907年)7月13日困難に打ち勝って前人未踏と信じられていた剱岳の登頂に成功しますが、山頂で錫杖頭と鉄剣を発見したことを思い浮かべました。笈ヶ岳で発見された経筒のひとつには「武州大田庄、光福寺住僧実栄、奉納大乗妙典六十六内一部」と刻んであり、永正15年(1518年)の年号が入っていたと言いますので、古来から笈ヶ岳は白山遙拝の山であったことが窺えます。

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 笈ヶ岳山頂にて-後ろには白山高峰群
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 北に続く稜線には大笠山と大門山(奈良岳は隠れて見えない)
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 北アルプスの山々が見えます(剱岳から穂高連峰まで)
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 槍ヶ岳と穂高連峰
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 剱岳と立山
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 乗鞍岳(左)と御嶽山

 山頂での記念撮影などしながら360度パノラマの眺望を楽しんでいると、単独行の男性若者がやってきました。聞くと、今朝2時に中宮発電所を出発したというので、何と6時間半という超スピードに驚きました。よく見るとアイゼンもつけてなくツボ足です。下山も駆け下りるように追い越されました。

 さて、名残惜しいのですが、あまり時間がないので20分ほどの滞在時間で下山することにしました。P1640まではピストンですが、シリタカ山から先にある、あのナイフリッジの通過はもうごめんなので、P1640からシリタカ山の北側の斜面をトラバースしながら下り、冬瓜平経由で幕営地に戻ることにしました。この斜面はかなり急になっていて、どんどんと下っていきます。途中で何か所かデブリの跡がありましたが、特に問題はありません。冬瓜平に近づくにつれてブナの林が目立つようになり、その中にはダケカンバの樹も混じっています。一旦鞍部に下ると登り返して行きます。やがて右手にブナの林立する平坦なところがありましたが、ここが冬瓜平と呼ばれる幕営適地とされるところと思われます。さらにトラバース気味に登っていくと幕営地に戻ってきました(11:15)。笈ヶ岳までの往復に6時間ほどかかったことになります。

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 名残惜しい笈ヶ岳に別れを告げます
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 県境稜線から下っていきます
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 シリタカ山北側の斜面をトラバースして下っていきます
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 素敵なブナ木立
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 トラバースは下って、そして登っていきます(結構しんどい!)
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 振り返ると、さっきまで登っていた笈ヶ岳が見えています
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 ブナ林がいい感じです
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 このあたりが冬瓜平です
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 幕営地に戻ってきました

 幕営地に戻ってきて昼食を摂り、テントを撤収して帰り支度をします。正午ちょうどに出発です。今日はまだまだ天気がよく暑いので半袖のTシャツ1枚でも歩くことができるほどです。しかし、今日は朝食も昼食もあまり食べなかったことからシャリバテ気味になってしまい、重いザックを担いでの下山も苦しい。山毛欅尾山まではアップダウンを繰り返す尾根ですが、P1271から山毛欅尾山までが長く感じられました。山毛欅尾山からはもう下りのみなので、雪に足を取られて何回か転倒しながらも、どんどんと下っていきました。今日の下りでは、単独行男性2人と6人グループに出会いましたが、いずれも中宮発電所からやってきたようでした。貯水池から中宮発電所までの長い階段の下りは疲れましたが、16:25にようやく無事に一里野温泉スキー場まで戻ってくることができました。

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 幕営地からアップダウンを繰り返しながら山毛欅尾山に戻ります
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 途中で振り返ると、大笠山、笈ヶ岳、冬瓜山が並んで見えます
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 P1271付近では白山も見えています
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 P1271からは笈ヶ岳が見えていました(昨日は見えなかったけれど)
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 山毛欅尾山から白山の眺望です
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 この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平20業使 第438号)

<コースタイム>
500幕営地 600冬瓜山 640シリタカ山 700P1640 740岩底谷の頭 810小笈 825笈ヶ岳845 850小笈 940P1640 1040冬瓜平 1110幕営地1200 1210P1418 1230P1312 1305P1271 1420山毛欅山 1450カンタの山 1535貯水池 1555中宮発電所 1625一里野温泉スキー場


by kitayama-walk | 2012-04-15 23:29 | 日本二百名山


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