山好き的日々@京都北山

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2008年 10月 12日

池の平・仙人池から阿曽原温泉へ (3日目)

 前日の雨も夜半には上がり、星空が出ていました。今回の裏剱探訪のハイライトである3日目は好天に恵まれるであろうと期待が膨らみました。予想どおり、3日目は朝からよく晴れていました。まだ日の出前から小屋の外に出て、日の出を待ちます。徐々に陽が昇ってきて、八ッ峰がモルゲンロートに染まり始めると、何とも美しい光景が展開してきました。やはり、この時期にこの山奥まで時間をかけてやってきただけの甲斐があったと思わずにはいられませんでした。
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 池の平から八ッ峰を見上げています



 前夜40人ほどの登山客が池の平小屋に泊まりました。5時すぎに起き、未だ寒い小屋の外に出て、シャッターチャンスを待つことにしました。間もなく、陽が昇り始め、八ッ峰が次第に赤く染まってきました。
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 モルゲンロートに染まった八ッ峰

 八ッ峰の最も高いところがチンネ、その左に八峰、右にジャンダルムがあります。チンネの下のところに、大きくえぐれたようになっている部分があります。池の平小屋のおやじさんが「モンローの唇」と呼んでいました。小屋の中にマリリン・モンローの写真なんかがあったことがうなずけました。
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 チンネの下にはモンローの唇が見えます

 池の平小屋から少し下ったところに平の池(劔池)という小さな池があります。剱沢の南沢と北沢の分かれる二股分岐の先から仙人新道を通らずに北股に沿って登っていき、池の平小屋に通じるルートがありますが、その途中に平の池があります。出発まで時間があったので、平の池まで下りていき、八ッ峰を見上げると圧巻でした。
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 八ッ峰の鋭鋒群と紅葉が美しい
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平の池とその周辺の池塘群
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 池塘の水面に映った逆さ八ッ峰

 池の平小屋で朝食を済ませ、午前8時出発しました。もう一度、八ッ峰の素晴らしい景色を脳裏に焼き付けておきたいという思いに駆られました。振り返ると、池の平小屋の背後にはモリブデンの原石が産出されたという池ノ平山(2561m)が大きく見えました。仙人峠に通じる登山道からは、昨日はよく見えなかった、小窓雪渓を抱いた八ッ峰が実に美しい。
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 後ろ髪を引かれるような思いに駆られる八ッ峰の眺望
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 池の平小屋(右下に小さく見える)の背後に大きく見える池ノ平山
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 小窓雪渓を抱いた八ッ峰(池の平小屋から旧鉱山道を歩き小窓雪渓から小窓に至るバリエーションルートがあります)

 10分ほどで仙人峠に到着。昨日はガスで何も見えなかったのですが、今日は実に素晴らしい景色が待ってくれていました。
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 池ノ平山と八ッ峰
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 鹿島槍ヶ岳(左端の双耳峰)と立山の別山か(右端)?
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 左に双耳峰の鹿島槍、真ん中には五竜岳、手前の南仙人山の向こうに八峰キレット、五竜岳の左手にギザギザしている不帰の嶮(キレット)-見えている小屋は仙人池ヒュッテ
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 右から五竜岳、不帰の嶮、唐松岳、白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳、旭岳と並んでいます

 仙人峠からは木道を下り少し登り返すと、ほどなく仙人池ヒュッテに到着しました。ヒュッテの右横には仙人池があり、ここは登山者(写真愛好者)の絶好の撮影地になっています。このときも数人の人がカメラと三脚を携えて撮影していました。仙人池ヒュッテには、名物のおばさんがいて、池の周辺の紅葉が昨夜の雨で落葉してしまったと言っていました。残念ですが、また来年来て下さいと。それと、ここから劔岳の本峰が見えるとか。300ミリの望遠レンズで眺めると、確かに劔岳の本峰がちらっと見えるではありませんか。
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 仙人池から眺める八ッ峰の絶景
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 仙人池ヒュッテに貼ってあった鳥瞰図
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 仙人池ヒュッテの正面入口

 さて、仙人池からの八ッ峰の絶景を堪能した後は、仙人温泉をめざします。仙人谷の沢底に下ります。かなりの急降下になっているので慎重になります。左岸から右岸に移り、さらにもう一度左岸に渡ります。谷間の紅葉がとてもきれいでした。
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 仙人沢を下る途中では後立山連峰がよく見えます
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 後立山連峰-唐松岳(右)から旭岳(左)までの眺望
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 谷間の紅葉が美しい

 やがて仙人温泉の源泉の湯煙が見えてきました。多少藪めいた道を下っていくと、小さな小屋があり、ここが仙人温泉でした。せっかくきたので、少し早い昼食にソーメンをいただき、ビールを飲んで、温泉に入りました。この仙人温泉の露天風呂は混浴でしたが(男性ばかり)、向こうに白馬三山が見えて、実に気持ちよかったです(極楽、極楽)。なお、女性専用のお風呂が少し下にありました。
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 仙人温泉の露天風呂ではしゃぐおじさん(写真アップ了解済み)
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 仙人温泉の背後の紅葉も美しい

 仙人温泉から仙人谷を下るルートが昨年から通行禁止となり、新に尾根筋を歩く雲切新道が切り開かれていました。まずは、仙人谷の沢底に下り、右岸に渡ります。そこから山腹をトラバースするように登り返します。途中で仙人温泉とその背後の美しい紅葉を見ることができました。
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 仙人谷の沢底を右岸に渡ります
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 仙人温泉とその背後の紅葉

 雲切新道はまだ新しい登山道で切り開かれた跡が残っています。最も標高の高い1629m地点あたりから、旭岳から鹿島槍までの後立山連峰のパノラマがよく見渡すことができました。
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 新しく切り開かれた雲切新道
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 最高点の1629mポイント
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 左の旭岳から右の不帰の嶮までが見渡せます
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 左の五竜岳から右の鹿島槍(双耳峰)までが見えています

 雲切新道の最高点(P1629)からは仙人ダムまで一気に800mの下りになっています。これがまた、切り開かれたばかりで登山道としてこなれていないことから歩きにくく、かつ前日の雨のせいで滑りやすい。途中にロープやはしごがたくさんつけられていました。中でも三段はしごは慎重に下らなければなりません。また、両側が切れ落ちたヤセ尾根があり、ここからは下の廊下から流れてくる黒部渓谷を見下ろすことができます。
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 急な下りにある三段の鉄はしご
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 途中、樹間から鹿島槍が眺望できます
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 はるか足元には黒部の流れが見えます

 半分ほど下りてくると、大きなブナのある樹林帯に入ります。ここもジグザグの急な下りが続いています。まさにひたすら下るという感じです。ようやく、眼下に仙人ダムが見えてくると、トラバース道に出て、仙人谷にかかる丸太橋を渡ります。
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 ブナの多い樹林帯に入ります
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 右手に雲切谷にかかる雲切りの滝が見えてきました
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 ようやく仙人ダムが見えてきました
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 仙人谷にかかる丸太橋を渡ります

 丸太橋を渡ると、谷の左岸につけられたコンクリートの道を進み、再び三段の長い鉄はしごを下ると仙人ダムに出ました。この仙人ダムには、下の廊下からやってきた登山道が合流し、欅平に向かうことになります。まず、ダムの管理所の建物の中に入り、「旧日電歩道」の標識に従ってトンネルに入っていきます。途中に、黒部ルート関西電力黒部専用鉄道・上部軌道)を横切ります。しばらく行くと、右手に扉があり、ここからトンネルを出ます。

 こんなところに鉄道が通っているのかと思いましたが、この鉄道は、昭和14年に日本電力(関西電力の前身)が仙人谷ダム(黒部川第三発電所の取水ダム)の建設資材輸送路として、欅平上部から仙人谷ダムまで延長5.7kmを敷設したものです(現在は黒部川第四発電所までの6.5kmとなっています)。このトンネルの掘削工事では、阿曽原から仙人谷までの間、約500mにおいて岩盤温度が160゜C以上に達し、高温のもとでの作業に加え、爆薬の自然発火など、我が国のトンネル工事史上に残る難工事となったということです。この工事の様子は、吉村昭の小説「高熱隧道」に詳しく描かれています。確か、数年前のNHK紅白歌合戦で中島みゆきが「地上の星」を歌った場所が、この鉄道の黒部川第四発電所駅付近のトンネルのからだったことを思い出します。
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 仙人ダムの上部からの眺め(正面に上部軌道が通過している)
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 関西電力黒部専用鉄道・上部軌道のトンネル
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 通行が許可されているトンネル内部
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 トンネルの行き止まり-ここの右手の扉から外に出ます

 トンネルを出て左に行くと、関西電力・人見平宿舎の横を通過し、再び登山道に入りますが、ここから130mほどの登り返しとなっています。疲れている体にはちょっと堪えます。やがて水平歩道に出てきます。
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 この登り返すが体に堪えます
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 水平歩道に入りました

 水平歩道とは、黒部川の上流域に設けられた欅平から仙人谷までの約13kmの歩行者専用道(登山道)です。道は黒部渓谷の左岸の絶壁を「コ」の字にくりぬいて作られており、70cmから100cm程の幅で標高約1000mの等高線に沿って水平に伸びています。 これに対し、旧日電歩道は、仙人谷(上部軌道の当初の終点)から黒部ダムまでの延長16.6Kmの登山道(下の廊下)です。

 程なく水平歩道から一旦阿曾原(あぞはら)温泉に下ります。阿曾原温泉小屋は、プレハブ造りでした。毎年営業終了後(10月中旬)には解体され、翌春に建て直されると言います。今日は満室でした。4つ部屋があり、各部屋に布団12枚で24人寝ます(つまり1枚に2人)。さらに、予約なくやってきた登山客が40人くらいおり、食堂で雑魚寝です。おそらく今年最高の宿泊客数でしょう。
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 阿曾原温泉小屋は超満員でした
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 テント場もぎっしりつまっています

 阿曾原温泉小屋から少し下ったところの段丘に秘湯情緒あふれる露天風呂があります。しかし、湯船がひとつしかないので、男女1時間交代になっていました。5時~6時は男性入浴タイムでしたが、5分前には女性数人が近くまでやってきて、早く交代するように催促しています。脱衣場も何もないところで、すでに薄暗くなっており、ひとりの男性がパンツがないと騒いでいました。でも、最後には何とか見つかったようで、交代できてよかったです。
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<コースタイム>081012晴れ
800池ノ平小屋 810仙人峠 850仙人池930 1050仙人温泉小屋(昼食)1200 1220雲切尾根頂上 1405仙人谷出合 1340仙人谷ダム 1445阿曾原温泉小屋


by kitayama-walk | 2008-10-12 23:45 | その他 | Comments(4)
Commented by イチマル at 2008-11-30 19:02 x
裏剱の3日目、山レポお待ちしていました。前半の天気は悪かったですが、天気が回復して良かったですね。モルゲンロートは、晴れていれば必ず見られるわけではないです。見られてよかったですね。私も裏剱は一番好きな場所なのですが、なかなか簡単には行けません。
Commented by biwaco06 at 2008-12-02 21:16
裏剱、八ツ峰の雄姿が素晴らしいですね!見るだけでも歩いた値打ちがあるでしょうね。
kitayamaさんがなかなかアップできなかったのは忙しさだけやなかったんだ~と納得しました。
あの感動を余すことなくまとめるのは、一苦労でしょう。
丁寧なルポ、行ってみたくなります。
Commented by kitayama-walk at 2008-12-02 23:40
 イチマルさん、こんばんは。
 実は、イチマルさんのHPで、池の平や仙人池の山レポを見させていただいております。こんなところに行ってみたいという思いを今年は実現することができて、本当にうれしく思います。確かに、少なくとも3日は必要なのでなかなか行けないところですが、また行ってみたいところですね。
Commented by kitayama-walk at 2008-12-02 23:42
 biwacoさん、こんばんは。
 確かに、言われるとおり、素晴らしいところだったので、それをたくさんの人に詳細に伝えたいという思いがありました。適当にアップするのがもったいないような気がしてしまいました。biwacoさんも、是非来年行ってみて感動を味わって下さいね。


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