2008年 03月 22日
御池岳や藤原岳から西方を眺めると、ピラミダルな形の山が目に付きます。何という山かと地図を調べてみると、天狗堂(988m)でした。天狗堂とは面白い名前の山だと思い、近いうちに登ってみようと思っていました。また、山頂の大岩に登ると正面に御池岳のテーブルランドが度迫力をもってせまり、藤原岳、銚子岳、静ヶ岳のラインナップがきれいに見えると紹介されています。登山口は木地師の里と呼ばれる君ヶ畑から往復することになりますが、天狗堂だけでは物足りないので、稜線を縦走して、これまた面白い名前の山であるサンヤリ(958m)まで往復しようと計画しました。サンヤリは展望があまりないと聞いていましたが、最近山頂付近の樹木が間伐されたようで、間近に天狗堂をはじめ、御池岳、鈴ヶ岳、伊吹山、霊仙山などの秀峰をたくさん見ることができました。 八日市ICから国道421号線を永源寺方面に進みます。この道は八風街道と呼ばれていますが、永源寺ダムを過ぎると、永源寺キャンプ場のところを政所方面に左折し、御池川沿いの県道34号線(多賀永源寺線)を進みます。蛭谷を過ぎ、君ヶ畑に入り、バス停のところに少し広い敷地があるので、ここに車を駐めさせてもらいました。 バス停から少し戻ると、二股になっているので、右の方に進むと、右手に高松御所と呼ばれる金龍寺(もっとも寺というよりも大きな民家という感じ)というがありました。 由緒を読んでみると、文徳天皇の第一皇子である惟喬親王は、次の皇位を継ぐはずであったが、時の摂政関白・藤原良房の娘と文徳天皇の間に生まれた第四皇子惟仁親王(清和天皇)との皇位継承争いに敗れ、失意の内、わずかの家臣を連れ、都を逃れ君ヶ畑(当時は小松畑と呼ばれていた)に幽棲したと言われています。 惟喬親王はこの地に金龍寺を建て、これを住居としました。以来、里人は小松畑を君ヶ畑と呼ぶようになり、金龍寺を「高松御所」と呼んだそうです。惟喬親王は法華経の巻物の紐を引くと、巻物の軸が回転するのを見て轆轤(ろくろ)を考案発明したと伝えられています。轆轤を使い、木材を原料とし、こま、椀、盆、こけしなどを作る人は木地師と呼ばれ、以来、この地が良質の木材の産出することも相まって「木地師発祥の地」と言われるようになったそうです。惟喬親王は日本木地師の元祖とされ、この地から多くの木地師が日本全国に散らばっていったと言います。全国各地の木地師縁の家の多くは、今も君ヶ畑を本籍地としているそうです。 金龍寺(高松御所)から少し進むと、右手に惟喬親王の墓所があります。「日本国中木地屋氏神惟喬親王御廟所」という石碑があり、階段を登ったところの墳丘は盛り土がしてあり、正面の石製の扉には皇室の紋章である菊花が刻まれていました。 さらに進んで行くと、大皇器地祖神社(おおきみきじそじんじゃ)の前に出てきます。緩やかな参道を登っていくと鳥居の前に出てきます。見事な杉の巨木が何本も立っている神社で、ここに惟喬親王が祀られているそうです。 さて、鳥居をくぐった右手に登山口の標識と登山届の箱が設置してあります。 ここから尾根に取り付きますが、いきなりの急登になっています。すぐに簡易水道の施設があり、その左横を通過して登っていくと、この道はNHKなどの共同アンテナの設置してある巡視路になっています。途中にすでに朽廃したアンテナがありますが、ブナや杉木立の中を登っていきます。急登が続くので地面を見ながら登ると、何やらケーブル様なものが這っています。 やがて、尾根が見えてくると、その左下を巻いて稜線に出たところに、共同アンテナがあり、天狗堂を示す標識も立っています。 ようやく平坦な植林帯の中の稜線になりますが、すぐに鞍部に下っていきます。そして、再び雑木林の中を登り返して平坦な稜線に出ると、左手の樹間に天狗堂がピラミダルな姿を現してきます。 尾根道を進むと、間もなく左にカーブして再び鞍部に下る場所に出てきます。ここからも天狗堂の頭が樹間を通して垣間見ることができます。 鞍部に下っていくも、踏み跡は明瞭であり、所々には目印のテープもたくさんつけられています。左手には植林帯、右手には雑木林を見る踏み跡は、鞍部から徐々に登っていきます。やがて左手から尾根が合流してくる手前から天狗堂の姿がよく見える場所があります。 左手からの尾根と合流してからは、尾根が広がり、明るい雑木林の中の山腹の急登となりますが、目印のテープが導いてくれます。 この二次林の中の急登の踏み跡を、息を切らせながら登っていくと、石灰岩が次第に増えてくると、大きな岩が出てきます。この大岩の間を抜けるように登って行くと、シャクナゲなども出てきます。やがて平坦な台地に辿り着くと、正面に大岩があり、ここに標識が立っていました。 右には御池林道に下る道がありますが、ここは直進し山頂に向かいます。わずかで山頂の大岩に着きました。 山頂の大岩の上に立ってみると、東正面に御池岳のテーブルランドが大きく横たわっていました。さすがに鈴鹿の重鎮らしく、その迫力には驚かされます。その右には鉄塔のある頭蛇ヶ平、天狗岩、藤原岳展望丘と並び、治田峠を越えて、銚子岳、静ヶ岳と続いています。 さらに南には、ちょっと樹木で見えにくいのですが、雨乞岳、綿向山と並んでいます。反対に、御池岳の左には鈴ヶ岳、伊吹山、霊仙山と並んでいます。こういう眺望が得られるからこそ、登ってきてよかったとしみじみ思うのです。 まだ11時なのでサンヤリまで行くことにしました。天狗堂の山頂から北に少し下ったところから、続き稜線を眺めるとサンヤリの山頂が見えました。 これからは尾根の稜線を外さないように忠実に歩くことになります。稜線の踏み跡は明瞭であり、安心することができます。途中には、小さなアップダウンがあったり、シャクナゲの藪漕ぎもあったりしますが、そう難儀するほどではありません。 総じて右手が伐採されていて、御池岳、伊吹山、霊仙山などが展望でき、左手は植林帯になっていますが、途中、南に雨乞岳、タイジョウ、綿向山が展望できる箇所がありました。 尾根は次第に左にカーブしていきますが、P924で左の尾根に入るように注意しなければなりません。あとは正面にサンヤリを見ながら登っていきます。右手が伐採されていることから、サンヤリの山頂の手前付近では、東に藤原岳がよく見えていました。天狗堂から1時間ほどでサンヤリの山頂に到着しました。 サンヤリの山頂は、最近伐採されたのでしょうか、結構眺望はよくなっていました。振り返ると、南には天狗堂が大きな姿を見せています。その左には静ヶ岳と銚子岳が並んでいます。 そして、サンヤリの尾根の突端まで行くと、御池岳が目の前にどっしりと横たわっていました。さらに、その左には伊吹山と霊仙山が並んでいました。気持ちよく晴れ渡っているサンヤリの山頂で昼食タイムにしました。 1時間ばかりサンヤリの山頂に滞在した後、引き返すことにしました。来た道を共同アンテナのある尾根分岐まで戻りました。ここからそのまま器地祖神社まで下ってもよいのですが、もう少し稜線を歩いて宮坂峠まで行ってみることにしました。尾根分岐を直進し、すぐに左手に下りて行きます。鞍部までくると右手にある尾根に乗って進みます。小ピークに来ると左に下りて行き、再び鞍部から尾根に乗って進むと、右手から溝道がやってきている宮坂峠に着きました。 宮坂峠からは左手に下る古道があるので、ここを進みます。山腹のトラバース道を行くと、やがて植林帯の中をジグザグ道が下っています。最後は少し不鮮明になっていましたが、辿り着いたのは登山口にあった大皇器地祖神社の境内でした。今日の登山の無事を感謝しながら、駐車地の車まで戻りました。 080322晴れ 840駐車地 845器地祖神社 915稜線分岐 955尾根分岐 1030天狗堂1100発 1135P924 1200▲サンヤリ1300発 1340天狗堂1400発 1445尾根分岐 稜線分岐 1500宮坂峠 1525器地祖神社 1530駐車地
by kitayama-walk
| 2008-03-22 23:56
| 鈴鹿山系
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