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山好き的日々@京都北山

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2011年 07月 16日

薬師岳を越えてスゴ乗越小屋へ(2日目)

【日 付】 2011年7月16日(土曜)
【天 候】 晴れ後曇り
【山 域】 北アルプス北部
【メンバー】 M井、M村、F田、kitayama-walk

【コース】 太郎平小屋-薬師峠-薬師平-薬師岳山荘-▲薬師岳-北薬師岳-間山-スゴ乗越小屋

 2日目は、いよいよ薬師岳を越えてスゴ乗越小屋に向かう、今回の山旅のハイライトコースです。天気は快晴で眺望の抜群で、言うことなし。どっしりとした山に踏み込んだいう印象が強い。北薬師岳との間にある金作谷カールは大きく、今年は雪が多かったこともあり、まだかなり雪渓を抱いたままでした。

 「薬師岳は、白馬や槍のような流行の山ではないが、その重量感のあるどっしりとした山容は、北アルプス中随一である。ただのっそりと大きいだけではない。厳とした気品もそなえている。・・・本峰の絶頂には祠があって、その前に献納の宝剣の錆びて折れたのがたくさん散乱していた。昔、有峰が登山口であった頃、登拝の人々はそれぞれ鉄で作った宝剣を携えて、それを頂上の祠に奉納するのが慣習だったらしい。その名残である。私はその中から形のよい剣の鉄片を選んで持って帰り、いまもこの原稿を書いている机の上で、文鎮の用に使っている。」(深田久弥「日本百名山」から)

 深田久弥は、最初有峰の村(今はダム底に眠っている)に一泊し、太郎平に登る道で迷い、豪雨に遭って薬師岳登山を断念しています。その後、二度チャレンジしており、一度は五色ヶ原から尾根伝いに越中沢岳を経て山頂に立っています(今回のコースと逆です)。その様子をこう書いています。「越中沢岳を越えて、薬師の稜線に取りかかってから頂上までが、実に長かった。この厖大な山は、行けども行けども、頂上はなおその先にあった。やっと頂に達したが、それは薬師北峰と呼ばれるもので、本峰までそれからまた大きな岩のゴロゴロした長い道のりを行かねばならなかった。」

 二度目は、有峰ダムができ、有峰口からの登山が盛んになったときで、「朝、汽車で富山に着いて、その夕方にはもう太郎兵衛平小屋で一ぱいやっていたのだから、隔世の感があった。・・・もう昔の祠は無くなり、宝剣の破片も片付けられて、新しい小さな祠が岩の間に祀られていた。」と懐述しています。

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 北薬師岳から東面の金作谷カール越しに薬師岳を望んでいます



 2日目の朝は快晴で明けました。今日は、薬師岳を越えてスゴ乗越小屋まで歩くハイライトコースなので、自ずと気持ちが盛り上がってきます。朝食を午前5時にとり、身支度を整えます。小屋に泊まった登山者の多くは黒部五郎岳方面に向かうようで、薬師岳に向かう登山者は少ないので、のんびりと歩けるようです。午前6時ちょうどに太郎平小屋を出発しました。まずは、木道を進み、テント場のある薬師峠に下っていきます。右手には次第に槍の穂先が姿を現してきました。

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 太郎平小屋前で身支度を整えます
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 太郎平付近からの東南方向のパノラマ写真
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 木道を歩いて薬師峠に向かいます
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 東方面には槍の穂先が少しずつ見えてきます
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 薬師峠に下る途中からの眺望です
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 薬師峠はテント場になっています-ここには水場とトイレがあります

 薬師峠からは、樹林帯に入り、沢筋沿いの道を急登していくとになります。結構急な坂になっていますが、沢沿いには、キヌガサソウ、サンカヨウ、ハクサンイチゲなどの白い花が咲いていて、しんどい思いを慰めてくれます。沢筋の上部はガレ場になっていて、この時期にはまだ雪渓が残っています。ガレ場の雪渓を右に左に渡りながら登っていくと、右手に登山道が上がっていき、木道が出てくると、平らな場所に出てきました。ここが薬師平と呼ばれるところで、大きなケルンがありました(7:05)。例の愛知大の遭難事故の慰霊碑になっています。ここからは槍ヶ岳などの眺望がよくなってきて、登山道は左に曲がっていきます。ハイマツの中を潜るようにして進むと、お花畑になってきて、さらに進むと尾根に上がっていきます。稜線に出るとバックに槍ヶ岳の姿が浮かび上がってきます。稜線に出ると間もなく新築された薬師岳山荘に到着しました(7:50)。

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 沢沿いの道を急登していきます
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 サンカヨウ(山荷葉)
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 キヌガサソウ(衣笠草)
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 ハクサンイチゲ(白山一花)
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 沢筋上部はガレ場になっていて雪渓が残っています
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 雪渓に沿って進みます
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 木道になってくると薬師平に着きました(7:05)
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 行く手に槍が大きく見えてきました-ここから左に回っていきます
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 ハイマツ越しに尖った槍の穂先が鋭い
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 尾根に向かって登っていきます
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 途中、雪渓歩きのところもありました
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 尾根に出たところで振り返っています
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 新築された薬師岳山荘に到着しました(7:50)

 薬師岳山荘は、2010年8月に改装されリニューアルして、きれいになっています。改装に際して、ドコモの電波受信機を設置したことで小屋周辺では通話がクリアにできるようになっています。これからは、薬師岳登山には人気の小屋になるでしょう。唯一惜しいことは生ビールがないことくらいでしょうか(早くおいてちょうだいね)。ここで小休止した後、薬師山頂をめざします。まずは、手前のピークである避難小屋跡までは、岩屑の多いジグザグした道を登って行きます。避難小屋跡というのは、石積みのシェルターのようなもので、人が2、3人程度しか入れません。冬期に吹雪かれたときに避難する程度でしょうか。そして、ここには右手から東南稜が合流してきています。愛知大の遭難事故は、悪天候のため下山時に、この東南稜に迷い込んで起こったものでした。確かに、主稜線も東南稜もほぼ同じくらいの幅のため迷いやすいため、濃霧時などは注意しなければなりません。

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 薬師岳山荘から先は、岩屑のジグザグ道を登っていきます
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 高度を上げて振り返ると、山荘の遙か向こうには、笠ヶ岳や御嶽山の姿も見えてきました
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 避難小屋跡の石積みとケルンに近づいてきました
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 ケルンから南方向の眺望
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 ケルンには愛知大の遭難の慰霊板があります
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 昭和38年1月愛知大山岳部13人が迷い込んた東南稜

 避難小屋跡からは、なおも稜線歩きが続いています。次のピークは左を小さく巻いて行くと、15分ほどで薬師岳山頂に到着しました。山頂には薬師堂があり、その中を覗いてみると、金色の薬師如来像が安置されていました。山頂からは360度パノラマが広がっており、北には剱岳、立山、そして後立山連峰の白馬岳、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳が並んでおり、さらには針木岳から烏帽子岳、赤牛岳、野口五郎岳、水晶岳などの裏銀座の山々、南には槍・穂高、笠ヶ岳、黒部五郎岳などの黒部源流の山々や乗鞍岳、御嶽山のオンパレードでした。また、北にある北薬師岳との間には、金作谷カールと呼ばれる大きなカールがまだたっぷりと雪を抱いており、国の特別天然記念物に指定された薬師岳圏谷群のひとつを形成しています。

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 避難小屋跡の次のピークは左を巻いていきます
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 薬師堂がある山頂に近づいてきました
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 薬師岳山頂の薬師堂に到着しました(8:55)
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 薬師堂の中には金色の薬師如来像が祀られています
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 薬師堂の脇にコンクリートで補修された三角点があります
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 北薬師岳との間には金作谷カールがあります
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 剱岳、立山、さらには後立山連峰の山々が見えています
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 剱岳と立山のズームアップ
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 東には、赤牛岳、野口五郎岳、水晶岳などが見えます
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 南には、槍・穂高、笠ヶ岳、乗鞍岳、黒部五郎岳、御嶽山が眺望できます
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 槍・穂高のズームアップ
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 笠ヶ岳、乗鞍岳、黒部五郎岳、御嶽山のズームアップ

 薬師岳山頂から北薬師岳までは岩稜帯をアップダウンしながら行くことになります。深田久弥が北薬師岳から薬師岳に歩いたときのことを、「やっと頂に達したが、それは薬師北峰と呼ばれるもので、本峰までそれからまた大きな岩のゴロゴロした長い道のりを行かねばならなかった。」と書いています。しかし、今日は天気もよく、岩稜を快適に降りて登っていくことができました。

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 まずは、北薬師岳を向こうにみながら、下っていきます
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 最初のピークは右を巻いていきます
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 再び下りとなります
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 今度は岩稜を登っていきます
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 少ししんどいけれど頑張って登っていきます
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 振り返ると、金作谷カール越しに薬師岳が見えます
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 北薬師岳山頂に到着しました(10:25)-少し早いけれど、ここでランチタイムにします

 次は、三角点のある間山(2585.2m)をめざします。北薬師岳からは急降下していき、途中で雪渓を渡り、再度登り返していきます。途中にお花畑があったり、小さな池があったりして、気持ちよく歩けるところですが、少しガスがかかってきて、眺望が悪くなってきました。

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 北薬師岳を出発すると、まずは下ります
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 次に岩稜帯の登りになります
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 ピークを越えると急下降になります
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 下降する登山道にはキバナシャクナゲの花が咲いています
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 雪渓を下っていきます
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 どんどんと下っていきます
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 お花畑にはチングルマがたくさん咲いていました
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 ミヤマダイコンソウの花もあります
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 鞍部からは緩やかに登り返します
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 振り返ると、北薬師岳が大きく聳えています
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 赤茶けた斜面をゆっくりと登って行きます
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 背後には、どっしりとした赤牛岳があり、その向こうには水晶岳、槍・穂高などが見納めになります
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 間山の手前には小さな池がありました
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 間山(まやま)に到着しました(12:20)
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 間山からの下りには雪渓が残っています
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 ガスがかかってきて、間山池付近では眺望がなくなりました
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 樹林帯の中に入ると、突然雷鳥が現れました-雛がいることから、母鳥が身を挺して守ろうとしている姿が健気です
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 もう後はどんどんと歩いて、今夜泊まるスゴ乗越小屋に着きました(13:10)
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 スゴ乗越小屋の夕食は天ぷらと煮物でした
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 間山とスゴ乗越の間が電池切れで軌跡がありません

<コースタイム>
600太郎平小屋 620薬師峠 705薬師平 750薬師岳山荘800 840避難小屋跡 855▲薬師岳925 1025北薬師岳(昼食)1115 1220間山 1310スゴ乗越小屋


by kitayama-walk | 2011-07-16 23:06 | 日本百名山


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