2009年 12月 13日
12月13日(日曜) 晴れ F田氏、N野氏と3人 イブネ・クラシというと、鈴鹿では最も知られざる地域で「鈴鹿の秘境」とも呼ばれていたそうです。それが今ではかなり歩く人が出て来ていると言われていますが、かく言う私もその一人です。昨年08.12.20には、オゾ谷からクラシ北東尾根経由でクラシ・イブネに登ったのですが、気になっていたのはクラシ北尾根でした。 HPなどでクラシ北尾根を検索してみると、ヤセ尾根、ジャンダルム(クラジャン)、シャクナゲ地獄という言葉が出てきます。鈴鹿界隈では危険な尾根ということなので、是非とも一度歩いてみたいと思っていました。1年越しの計画を実行する機会がやってきました。当日は、歩行時間に余裕をもたせるため、いつもより早く歩き始めるように計画を立てました。ワサビ峠からクラシまでのクラシ北尾根は最近整備されたようで、特にシャクナゲの木枝は、通過しやすいように邪魔になるところは切除されていて、歩くのに苦労することはありませんでした。奥村光信氏の地図では120分のコースタイムと書かれていましたが、実際には1時間もかかりませんでした。歩行ルートは以下のとおりです。 <歩行ルート> 朝明渓谷駐車場-中峠分岐-曙滝-中峠-大瀞-オゾ谷出合-クラシ登り口-ワサビ峠-クラジヤン-クラシ-イブネ北端-イブネ-杉峠-コクイ谷出合-上水晶谷出合-国見峠-国見岳-青岳-きのこ岩-根の平峠-朝明渓谷駐車場 今日のコースはロングコースということで、いつもより早く4:30に京都を出発することにしました。新名神のおかげで京都から鈴鹿は本当に近くなりました。京都東ICから新名神経由で東名阪・四日市ICで下り、R477からR306を経て、朝明渓谷をめざしました。午前6時前に朝明渓谷の駐車地に到着しました。まだ日の出前で周囲は薄暗かったのですが、この駐車地に去年までなかった「有料駐車場」と書かれた看板がありました。この駐車地では、以前から朝明観光協会なる団体が「協力金」という名目で500円(普通車)を徴収していたのですが、この趣旨が明確ではなく(駐車代とすると営業利益となり課税されるからだと思います)、協力金というからには当然「任意」なので、支払を拒絶していました。駐車料金というのであれば、車を駐車する対価としての支払なので、駐車するからには仕方がありません。しかし、今日は朝早い時間なので徴収人もいません。身支度を整え、ヘッドランプを点けて歩き始めることにしました。朝明川に架かる見返橋を渡り、朝明川の右岸に沿って舗装道路を進みます。伊勢谷小屋に渡る橋のところに「根の平峠・ブナ清水への登山口」と書かれた看板が立っていました。 間もなく砂防学習ゾーンを通過し、しばらく行くと、羽鳥峰峠との分岐に来ます。ここでは左に取り、中峠に向かいます。下って河原に出ると、以前にはなかった木で作られた橋がありました。橋を渡り、左手に進みます。すぐに堰堤があり、その左手を登り、谷に下ります。その後、この谷の左岸に明確な道が続いていました。やがて、滝の音が聞こえてくると、再び谷に下ると右手に曙滝が見えました。落差20mほどの小振りの滝ですが、糸を引くように流れ落ちています。曙滝の左に小さなガレ谷があります。このガレ谷の左手に登山道があります。急登ですが、すぐに緩やかになって、再び涸れ谷に下りてきます。ここで注意したいのは、そのままこの涸れ谷を登らないことです。すぐに左手に尾根に取り付く道があります。この道は次第に高度を上げていくので、しばらく進み振り返ると釈迦ヶ岳が見えてきます。やがて、掘れた溝道となると、間もなく中峠に出てきました。 中峠からは、下水晶谷の右岸に沿って神崎川(愛知川の上流)に下って行きます。道ははっきりしているので迷うようなことはありません。途中で昨年9月の集中豪雨の爪跡が残っているところもありますが、通過するには問題はありませんでした。2、3の支谷を横切り下っていくと、愛知川に出てきたところが大瀞です。ここには鉄橋(大瀞橋)がありますが、「危険につき渡れません」と書かれたの朝明観光協会の看板が出ています。右手に行き本流を渡渉して下さいとの案内があります。朝明観光協会も高い駐車料金を徴収するなら、この橋もちゃんと改修してほしいものです。大瀞を越えると、愛知川の左岸に沿って道が続いており、オゾ谷をめざします。最初は高巻き道でしたが、大きな窯跡を過ぎると、次第に愛知川に近くなってきて、左岸沿いに歩くことができます。しばらく進むとオゾ谷出合にやってきました。 オゾ谷出合からは、右に向けオゾ谷の左岸に沿って踏み跡が登って行っています。途中に炭焼き窯の跡がある平坦地を過ぎると、谷を2つ越え、中ノ島と呼ばれるところに出てきます。ちょうど休憩にはいいところです。小さな尾根筋を行くと右手に石垣跡が出てきました。これは昔あったマンガン精錬所と言われており、その奥には広い台地の飯場跡もあります。やがて、オゾ谷に近くなり、谷を何度か渡渉しながら進むと、クラシ登り口に出てきました。ここで左に行けばクラシ直登、右に行くとワサビ峠になります。08.12.20にはここで左に行きクラシに直登しましたが、今日は右に行きワサビ峠をめざすことにしました。 09.11.15にもクラシ登り口からワサビ峠をめざしましたが、このときは尾根をひとつ間違えて左の尾根を登ってしまいました。今回は間違えないように、右の谷を越えて登っていきます。青テープがつけられているので、これを目印に進みました。ワサビ峠への道は、途中で再度左手の谷に下り、これを越えて登っていくのですが、谷に下らずに右手に急登して行きました。そして、ピークに着いたと思うと、ここは「高岩」でした。また間違えてしまいました。高岩からは尾根を左に下るとワサビ峠にやってくることができました。 ワサビ峠で最初の休憩をし、これから未踏のクラシ北尾根に入って行く前のワクワクする気持ちを楽しむことにしました。ワサビ峠からのクラシ北尾根は地形図で見ても一本尾根になっているようで迷うようなことはなさそうです。ただヤセ尾根なので慎重に。しかし、いきなりの急登です。足を滑らせないように注意しながら登っていきます。尾根は疎らな樹木はあり、手がかりしながら急登を登ります。やがて傾斜が緩やかになったと思いと両側が切れているヤセ尾根になってきましたが、まだ高度感はありません。目印のテープが結構ありますが、迷うようなルートではないので、気休めです。尾根上に五葉松があり、「ヤセ尾根には松が似合う」などどまだ余裕のペースです。シャクナゲも出てきましたが、まだ大したことはありません。途中で左手(三重県側)の展望が開け、御在所岳や釈迦ヶ岳などが見えます。 やがて最初のピークにやってきましたが、その手前に岩場があり、いかにも脆そうなところです。ここで前方の景色が見えてきて、鈴鹿のジャンダルム「クラジャン」が目の前に現れました。ワクワクしてきました。高鳴る気持ちを抑えて、周囲を見渡すと、右手後方には大峠の頭から銚子ヶ口に至る山群が鎮座しているように見えました。この岩場は右を巻くことになります。一旦少し下り、鞍部に出てから、クラジャンに取り付きます。急登ですが、シャクナゲなど木の根や枝がたくさんあるので、手がかりにして登っていきます。やがてクラジャンのピーク(1055m)に到達しました。ここは眺望がよく、前方には左がガレた次のピーク(1100m)が見え、右手には銚子ヶ口の山群があります。ふと足元をみると、上谷尻谷側が切れ落ちています。ここから転落したらと考えるとぞっとしてしまいます。 クラジャンのピークからは、再び少し下りとなります。鞍部に下ると、左がガレている尾根を登っていきます。ここまできても「シャクナゲ地獄」というような箇所は見当たりませんでした。以前はそのような状態になっていたのしょうが、通過しやすいように、シャクナゲの枝が切り落とされています。急登ではあるものの、着実に登っていくことができました。1100mのピークから振り返ると、クラジャンの向こうに、御池岳から藤原岳、竜ヶ岳に続く鈴鹿の主稜線が見えていました。最後のピークを越えると、緩やかな尾根道となり、ブナ林になってきました。前方にイブネの台地が見えてきましたが、左手にあるクラシのピーク(1154m)に立ち寄ってきました。 立ち寄ったクラシのピークから一本杉と呼ばれる地点まで引き返し、今度はイブネに向かいます。向こうにイブネの台地が見えています。この付近も以前は背丈を越すほどのササに覆われていたと言いますが、今は見る影もなく枯れており、平原のようになっています。まずはイブネ北端まで駆け上がりました。このイブネ北端は眺望地点となっていて、釈迦ヶ岳から竜ヶ岳、三池岳、静ヶ岳、銚子岳、藤原岳、御池岳、鈴ヶ岳、伊吹山、霊仙山といった鈴鹿の主峰が見渡せます。今日は、晴れているので、はるか遠くに雪をいただいた白山、乗鞍岳、御嶽山、そして南アルプスの山々を見ることができました。 イブネ北端からイブネに向かう平原は、実に素晴らしい景色が堪能できるところで、私のお気に入りの場所のひとつになっています。イブネに向かうとすぐに南に雨乞岳が大きく見えてきました。実に存在感のある山です。右には銚子とそれに続く銚子ヶ口の山々が見えています。さらに進むと、イブネの山頂-とはいってもどこが山頂かはよくわからないのですが、プレートのあるあたりが山頂とされています-に近づいてきます。左手には御在所岳と鎌ヶ岳が逆光の中で光って見えてきました。 イブネの山頂付近での素晴らしい景色を堪能して、これから杉峠に向かいます。やはり笹の枯れた平原のようなところに前方に雨乞岳を見ながら少しずつ下っていきます。少し下った鞍部に2つに割れた岩があり、ここが佐目峠でした。ここから左の谷に下り、直接鉱山跡付近に出る道もあるようですが、今日は杉峠をめざします。佐目峠からは登り返しになりますが、アゲンギョと呼ばれる付近で左に行くことになります。ここには、去年までなかった方向を示すプレートが設置してありました。右に行けばタイジョウです。杉峠からイブネに向かうときは、ここで直進してしまい、迷いやすい地点です。左に取り、杉峠向かいます。途中の樹林の中のピークに杉峠の頭(1121m)があります。ピークを過ぎると徐々に下りとなり、また樹木がない平原に出てきました。ここからは正面に雨乞岳がさらに大きく見え、右手には綿向山、左手には御在所岳が見えます。さらに下るとまもなく杉峠に着きました。この峠には、その名のとおり、杉の大木が2本立っていますが、1本は枯れてしまっているようです。まだ10:20と早かったのですが、昼食タイムとしました。 杉峠の東側の斜面は風よけができ、日向になっていたので、ほっこりしながらランチタイム40分を取ることができました。昼食後は、杉峠から一般登山道を下り、鉱山跡を経てコクイ谷出合に行き、そこから上水晶谷まで行きます。杉峠からの下りは、滋賀県の甲津畑からやってくる千種街道です。織田信長が1570年にこの峠を越えたことは有名です(狙撃事件あり)。峠から左手の谷に下っていきます。登山道はしっかりとしていて迷うようなことはありません。やがて、石垣跡に出てくると、ここは御池鉱山跡と呼ばれています。この地域には、向山、御池、国位、高昌、大蔵の鉱山があり、主に銀と銅を採掘していました。明治末期に最盛期を迎え、約300人が稼働していたと言います。金山神社や高昌尋常小学校跡も残っています。このあたりは平坦地で水も豊富にあり、キャンプ地としては適地です。 鉱山跡の石段や飯場跡を通過すると、少し大きい支谷を渡ったところに標識があり、これには佐目峠(難路)と書かれていました。佐目峠からショートカットして下ってくる道があると聞いていますが、ここに下りてくるのでしょうか。やがて、谷の左岸沿いの山腹をトラバースしながら、支谷をいくつも越えていくと、広い樹林下を歩くようになります。大きなトチの木を巻くように下っていくと、やがて渡渉地点にやってきました。渡渉して谷の右岸沿いに歩きます。大きな窯跡を過ぎると細い山道を進みますが、間もなく谷に下る地点があり、ここにはロープが設置してあります。ここで谷に下るようにして少し進んだところがコクイ谷出合でした。支谷はここでコクイ谷と合流し、愛知川上流となって大瀞の方に流れていくことになります。 コクイ谷出合で右に行くと武平峠に向かいますが、ここでは左にとり、上水晶谷をめざします。愛知川の右岸沿いに道が続いています。谷沿いに進むと、樹木もきれいで左手に渓流を見ながら足取りも軽やかに進むことができます。やがて、上水晶谷との出合にやってきます。谷を渡渉したところでまだ正午過ぎでした。このまま根の平峠に向かう予定でしたが、時間的な余裕があるので、国見峠に向かい、県境稜線を北上して根の平峠に行くことにしました。上水晶谷出合からは左手にとり、上水晶谷の右岸沿いに道がついています。この道は数年前に一度歩いたことがありますが、記憶では谷沿いに進むことになります。最初不鮮明だと思われた道ですが、目印のテープが途切れることなくついていました。途中で小さな滝があったり、地獄谷と呼ばれる涸谷を過ごしたりしながら、次第に登っていくことになります。少々飽きてきた頃に、ササが出てきて、間もなく県境稜線の国見峠に着きました。 <コースタイム>091213晴れ 610朝明渓谷駐車場 630中峠分岐 645曙滝 710中峠 730大瀞 750オゾ谷出合 810クラシ登り口 835ワサビ峠 900クラジャン 925クラシ 930イブネ北端 950イブネ 1020杉峠(昼食)1100 1150コクイ谷出合 1205上水晶谷出合 1300国見峠 1320国見岳1330 1340青岳 1345きのこ岩 1420根の平峠 1510朝明渓谷駐車場
by kitayama-walk
| 2009-12-13 23:18
| 鈴鹿山系
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